重要なお知らせ 「法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会報告書」に対するご意見の募集について

研究会の検討結果(報告書)が取りまとまりましたので公表するとともに、総務省(行政評価局)が行う政策評価の参考とするため、本報告書について、広く国民の皆様のご意見を募集します。

平成23年1月31日(月)午後6時まで

http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/38572_1.html

(コメント)
この報告書、かなり面白い。
意見しようかな。

※一部抜粋
また、上記のほか、各委員から、法曹人口の拡大、法科大学院、司法試験等について、
以下のような指摘があった。
【法曹人口の拡大について】
・ 法曹人口を考える際に、日本の実情、社会における司法の機能、隣接法律専門職
との関係、ニーズがどれだけあるのかといったことについての緻密な検討に基づか
ずに、何となく外国との比較で最低でもフランス並みにというような数字を設定し
たから、今このようなことになっているのではないか。
・ 法曹というものの中身、質を考えないで、人数を大幅に増やしたら、需給バラン
スが崩れるのは当たり前。日本における法曹の位置付けを変えるぐらい需要を高め
ていくためには、根本的に今までとは違った質のものを生み出す努力をしなくては
ならないが、それが行われてこなかったから、今、こういう状況に至っているので
はないか。
・ 法廷で、裁判官、検察官、弁護士として活動していくためには、ある程度の能力
が求められるが、民間ベースの仕事であれば求められる能力はマーケットメカニ
ムで決められていけばよい。それを一緒にしてしまったために、どちらもうまくい
かなくなったのではないか。イギリスのソリスタ(法廷弁護士)、バリスタ(非法廷
弁護士)のような二通りの試験制度とするという議論もあるのではないか。
・ 現在、弁護士は就職難で、これ以上、法曹資格保有者が増えたら更に悲惨な状態
になると言われており、新司法試験合格者2,000 人というのも、現状からするとや
むを得ないようにも思われる。ということは、法曹人口5万人の構想が問題だった
のではないか。
・ 法曹人口5万人構想について、裁判官、検察官、弁護士の数を、それぞれどれぐ
らいにするかという議論がほとんど行われておらず、結果的に弁護士の数だけが拡
大していくというようなことになっている。
・ 法曹人口5万人構想の中には、企業で法務をやる人間も対象とされていたのでは
ないかと思われるが、企業法務をはじめとする在野法曹のニーズとの合致は意識さ
れていたのか。新卒入社後5年間労働した人材は立派な即戦力であるが、そこに「法
律に関しては詳しい」新卒学生が加わって勝負になると考えていたのか。あるいは、
生涯、法務関係の仕事のみを行う専門職的な利用しか考えていなかったのか。
・ 一つの割り切りとして、弁護士の資格は上位3,000 人の方には与えましょう、た
だし、全員が弁護士として食っていけるかどうかは別ですよという考え方はなかっ
たのか。
・ 法曹の役割を検討するに当たって、司法書士社会保険労務士等の隣接法律専門
職の役割をあまり考慮した議論が行われていないが、これで、的を得た解決策が得
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られるのか疑問。近年、特定社会保険労務士による労働審判の代理業務、司法書士
のADRでの代理業務や多重債務者の救済など、隣接法律専門職の業務が拡大して
きており、弁護士同士の競争だけでなく、弁護士とこれら隣接法律専門職との競争
も増加している。
・ 法曹人口の増加による質の低下等の問題は、弁護士について言われているのでは
ないか。裁判官、検察官は、成績上位者から採用すればよいので、法曹人口が拡大
しても実害がそれほど直接は感じられないと思われる。
・ 法曹人口問題は、見方を変えれば、政府と敵対できる法律家はどれぐらいに抑え
るべきかという議論でもある。民事訴訟はどんどんADR化して裁判所外で処理さ
れているので、最終的に行政訴訟、刑事訴訟で政府と敵対する法律家はどれぐらい
いるべきなのかという議論でもある。
法科大学院を修了しても法曹になれなかった(司法試験に合格しなかった)人は
欠陥商品だと言われているように見受けられるが、学んだことを他の隣接法律専門
職等で活かす道もあるはずであり、それを視野に入れた議論がほとんど行われてい
ないのは何故だろうか。
・ 法曹資格がなくともできる重要な仕事もあり、法曹資格を取れなかった人の処遇
の問題についても、司法書士行政書士等の隣接法律専門職等の資格との関係を含
めて考えていく必要がある。
・ 今でも、例えば、学校でちょっとしたトラブルの時、親が来ないですぐ弁護士が
来て、ああだこうだと言って困ると学校の先生が言っている。弁護士を増やすこと
が、変に需要を増やすことになりかねず、社会全体としてみると果たして幸せなこ
となのであろうかと考えてしまう。
法科大学院について】
○ 制度設計、入学定員
法科大学院を設置するときに、法学部を廃止すべきではないかとの議論があっ
たが、結局そうはしなかった。その結果、法学部を有する大学は、法科大学院
つくらないと存在価値が失われるかのような脅迫観念から、そのほとんどが設置
したため、約6,000 人弱の入学定員になってしまった。
・ 法学部を廃止すると、企業等への22 歳くらいの大学卒業者の就職者が、文系
の場合、ほとんど経済学部だけになってしまい、偏ってしまうのではないか。
・ 教育というのは、一定のカリキュラムによる教育を受ければ、必要とされる能
力が身につくということが前提になっているはず。法科大学院を修了しても新司
法試験に合格できない人が多数いるというのは、うまく制度設計ができていない
と思う。
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・ 現行制度の下では、ストレートに法曹になっても26 歳で、受験3回目で合格
すると29 歳、不合格となると30 歳前後で就職先探しを始めるということになる
が、例えば、法学部の学生は2年生の段階で法科大学院の選抜試験を行い、その
後3年間で法律の専門的教育を行うことにすれば、法曹養成期間を1年間短くで
きる。そのような選択肢もあってよいのではないか。
・ 法学部出身者は、学部で2年、法科大学院既修コースで2年、計4年間勉強す
ることになるのに対し、法学部以外の者は法科大学院の未修コースの3年間の勉
強で修了できることになっている。法学部出身者の勉強期間は、もっと短くても
よいという考え方も出てくるのではないか。
・ 入学定員の問題については、時間はかかっても、競争原理によって、良い法科
大学院が残っていって制度が落ち着いていくという話であったが、他方で、法曹
需要が伸びず、弁護士の就職難の問題が生じてきており、競争原理だけでは解決
できなくなってきている。
・ 旧国立大学の法科大学院の入学定員の削減が、一律に行われているようにみえ
るが、合格成績の良い大学院は教育環境・内容に優れていることが高い確率で推
定され、志望者も多いはずで、市場原理が働いていないのは「法科大学院教育の
充実」というテーゼとも矛盾しているように思われる。また、法科大学院の経営
を考えれば、一定規模の学生数は必要であり、それを確保するために大学院の質
を高めるよう努力するわけであるから、この点からも旧国立大学のみ一律削減の
方向でそろっているのは奇異に映る。
○ 多様な人材の確保
・ 社会人は、仕事をやめて、あるいは、出世をあきらめなければならないかもし
れないという負担を負ってまで挑戦しても、どれくらいのリスクがあるかわから
ないという不安があるから、踏み出せないところがあるのではないか。
・ 司法試験の合格率の高いところは、法学部の4年プラス法科大学院の既修コー
ス2年の計6年という形での学生を確保しようとする傾向にあり、法学部以外の
多様な人材の確保という理念から大きくズレ始めているのではないか。
・ 多様な人材の確保といいながら、働きながら学ぶための夜間コースがある法科
大学院は少ないなど、多様な教育の仕組みが保障されていないのではないか。
○ 教育内容
・ 世の中は、法科大学院の役割・機能について、司法試験の合格以外のものをほ
とんど認めていない。このため、良い教育をしても、司法試験に合格しなければ
意味がなかったという話になってしまう。
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・ 現在の法科大学院では、司法試験のための勉強が中心にならざるを得ず、例え
ば、家族法の専門家などを養成しようとしてもできない。
・ 逆説的だが、法学部の段階では司法試験に関係のない真の法律の勉強をし、法
科大学院では、予備校のような授業をして司法試験に合格するようなやり方をす
れば、今よりも、本当の意味での法学の勉強をすることに充てられるかもしれな
い。その試験に合格しなければ資格が与えられない場合、当該試験が難しければ
難しいほど、それに合格するためにノウハウが発達し、また、それが目的化する
ことは必然。
法科大学院協会がモデルカリキュラムを作成しようとしているが、新司法試験
の合格率と法科大学院教育の質の両方を向上させることが求められている中で、
全ての法科大学院がモデルカリキュラムに沿った同じような教育を強いられ、思
想統制とはいわないが、その一歩手前まで進んでしまうおそれがあるのではない
か、と懸念している。
法科大学院の教育を評価できるのは、市場(法律サービスのユーザー)であり、
現時点では、新たな法曹養成制度を経た弁護士等の活動実績が十分でないため、
評価するのは困難ではないか。
○ 修了認定
法科大学院修了者の7割から8割が新司法試験に合格するようにするとの目標
を定めながら、他方で、法科大学院としての設置基準を満たしたものは広く参入
を認める仕組みとなっている。その結果、現在の定員約5,000 人、合格者約2,000
人を前提とすれば、合格率7割から8割を達成するためには、修了認定を厳しく
して受験資格者を3,000 人未満に絞らなくてはならないはず。しかし、現行は、
ほとんどの者が修了できるようになっているのではないか。
○ 認証評価
・ 最近、認証評価基準に「新司法試験の合格率」が追加されたが、そのことと、
法科大学院では三分の一以上新司法試験の必須科目を教えてはいけないとされて
いることとの関係が理解できない。
・ 認証評価結果が高いことと、司法試験の合格率は連動しておらず、組織的に受
験対策をやっているところの方が合格率は高いようなので、その辺を検証してみ
てはどうか。
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【新司法試験について】
○ 制度設計
・ 政府として合格者数3,000 人の目標を掲げたのに2,000 人しか合格しないとい
うことは、受験生の立場からすると、「上位3,000 人に入れば合格する」と思って
法科大学院に入学したのに、一定の能力に達しなければ、上位3,000 人に入って
も合格しないということになり、裏切られたという気になると思う。政府の対応
として誠実さに欠けるのではないか。
・ 少なくとも、受験生にとっては、合格者数を決めた上で試験が行われているよ
うに見えているところが問題。
・ 旧司法試験制度は、裁判官や検察官として有すべき能力を判定するとの観点が
強かったのではないか。新司法試験も同様の考え方で行っているから、法科大学
院在学中、ずっと司法試験を意識した勉強をしなくてはならなくなるのではない
か。弁護士を目指す人は多様な勉強をして短期間だけ司法試験の勉強をし、裁判
官など訴訟中心に行う人は少しグレードの高い能力を身につけるような勉強をす
るなどとしてもよいのではないか。
・ 日常生活で必要とされるベーシックな法律論等の問題を中心とした試験内容と
すればよいのではないか。そうすれば、法科大学院修了者の7割から8割の者が
合格するようになり、法曹人口の拡大も図られ、別に誰も困らないのではないか。
・ 働きながら、経済的にもあまり負担にならないような形で法科大学院で勉強し、
司法試験に合格するというのが理想だと思うが、現行の試験では難しいのではな
いか。
○ 試験方式、内容
・ 新司法試験は資格試験か競争試験かというところを、きちんと整理することが
必要。その結果、資格試験であるというのであれば、それに見合った試験問題と
すべき。
・ 国民が法曹に求めるニーズとは何か。新司法試験の内容は、市民のニーズを踏
まえたものとなっているのかという観点からの議論は、あまり行われていないの
ではないか。
・ 試験科目の比重が、社会的ニーズを踏まえたものとなっていないのではないか。
例えば、民法に比べ、刑法の比重はより軽くてもよいのではないか。
○ 合格基準、合格者の決定
・ 新司法試験の試験委員の選考基準が不透明ではないかとの指摘があるが、どう
か。
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・ 採点基準や採点マニュアルなどはどうなっているのか、守秘義務に抵触しない
範囲で検証する必要があるのではないか。また、合格者数を何人にするか、ある
いは、何点以上を合格とするか、どのような基準に基づいて決定しているのか、
明確な基準はないのではないか。
ヒアリングした方のコメントにもあったが、新司法試験の問題は、合格者を判
定するための機能を適切に果たす内容になっているのだろうか。論理的思考力や
事例解析能力等を見るための試験とすることを強調するあまり、受験生にとって
は、どのように合否が判定されるのか、合否の予測が困難になっており、その結
果、多様の人材が法曹になることを困難にしているのではないか。
例えば、短答式試験は何点以上を合格とするとか、論文式試験は模範回答を示
すなど、合格の目安を示すべき。
・ 7割合格が前提であれば、5割ですら超えるものが数校しかない現状は、全法
科大学院が要求水準を満たしていないのかということになってしまう。また、司
法試験予備校の一流講師がついて教えても、今の2,000 番目の合格者のレベルを
維持しつつ合格者を3,000 人にすることは難しいという。つまり、合格者を3,000
人にするということは、合格水準をそのレベルまで下げるという了解が当然にあ
ったのではないか。あるいは、今でも、合格レベルを保ったまま、法科大学院
質を高めれば3,000 人の合格者を出せると考えているのであれば、その根拠を示
すべき。
○ 受験回数制限
・ 受験回数を制限する明確な根拠がないまま、現行の5年間に3回までというル
ールが決められているのではないか。
・ 受験回数制限はないほうが良いと思う。現行の5年間に3回の制限は、サプラ
イサイドの発想で、受験者の気持ちを斟酌していない仕組みだと思う。
○ 予備試験
・ 平成23 年度から行われる予備試験については、規制改革推進のための3か年計
画(再改定)(平成21 年3月閣議決定)において、「予備試験合格者数について、
予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験
合格者の割合とを均衡させるとともに、予備試験合格者が絞られることで実質的
に予備試験受験者が法科大学院を修了する者と比べて、本試験受験の機会におい
て不利に扱われることのないようにする等の総合的考慮を行う」とされているこ
とを踏まえ、適切な措置が講じられるべきである。
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【その他】
・ 司法試験の受験資格喪失者などの不合格者に対するケアはどの程度行われている
のか。現在、法務省及び文部科学省は、その実態を把握していないが、速やかに把
握し、何らかの抜本的対策を講ずべき。上記の合格基準、合格者決定の項にある「合
格の目安を示すべき」の事項と併せ、今のままでは、合格の目途もつかずにいたず
らに受験勉強に走り、不合格だと放置されるという不安を抱えたままの制度である。
・ 次のような、志願者への説明不足と志願者の認識不足を解消する努力・工夫が
必要ではないか。

  • 学生諸君の「根拠なき楽観」=自分は違う、真面目にやれば通る、三振した

ときのことは考えていなかった。

  • 通れば、専業弁護士として喰っていけると思い込んでいる。
  • 三振した場合の「人生ロス」についての認識不足=官庁を含めて、新卒22 歳

から働いている者と30 歳近くになって入社(省)するものとの「生涯格差」
の認識の欠如。

  • 新卒時にあった、多彩な人生選択が一般的に失われたという事実の不認識。